電力業界の基礎知識
昨今は波乱含みの電力業界ですが、そもそも日本の電力生産の電源構成は以下のようになっています。
石炭30.8%、石油3.1%、天然ガス39.1%、原子力3.8%、水力7.8%、太陽光・風力10.4%その他4.9%
且つ各電源の発電単価は通常以下のとおりとされております。
石炭火力12.5円/kwh、LNG火力10.7円/kwh、原子力11.5円/kwh、石油火力26.7円/kwh、
陸上風力19.8円/kwh、洋上風力30.3円/kwh、太陽光(事業用)17.7円/kwh
上記の電力単価は例えば産油国の動向、戦争など地域紛争、発電所の整備修理、電力の需給動向などによって大きな影響を受けます。
今後の電力料金の動向などは、上記のような要因が絡み合い予測が困難な状態となっています。
電力・発電から消費までの流れ
水力、火力、原子力、太陽光、風力、地熱などの発電所を運営し、電気を作る部門です。
発電部門との取引(卸電力取引)
卸電力取引は、発電事業者と小売電気事業者との間で行われる電力取引であり、相対の取引と取引所取引の2つに大別されます。
「発電事業者は効率的に発電して高く電力を売る」「小売事業者は自社の顧客の電気を効率的に卸買いし、それを顧客に届ける」などの活動となります。この発電事業者と小売事業者の間の電力売買の仲介役として、取引所は機能します。
JEPXは発電事業者から電力を購入し、それを小売事業者に売っています。卸電力のため、購入できるのは会員登録した電力会社だけです。2023年3月時点でJEPXの会員数は281社にのぼります。
電力の需給バランスは「同時同量」でなければならないという点です。「同時同量」とはつまり、電気をつくる量(供給)と電気の消費量(需要)が、同じ時に同じ量になっているということ。これらの量が常に一致していないと、電気の品質(周波数)が乱れてしまい、電気の供給を正常におこなうことができなくなってしまいます。その結果、安全装置の発動によって発電所が停止してしまい、場合によっては予測不能な大規模停電をまねく可能性があります。2018年9月に発生した北海道全域の停電“ブラックアウト”は、この電力需給バランスの崩壊が原因でした。
そのため、電力会社はあらかじめ「発電計画」を作って、これをベースに電力需要の変動に合わせて発電する量を変えています。つまり、たくさん電気が使われると予想される時には多くの量を発電し、電気があまり使われないと予想される時には発電量を抑えるよう、コントロールしているのです。
①電力の需給バランス
電力の需給バランスは「同時同量」でなければならないという点です。「同時同量」とはつまり、電気をつくる量(供給)と電気の消費量(需要)が、同じ時に同じ量になっているということ。これらの量が常に一致していないと、電気の品質(周波数)が乱れてしまい、電気の供給を正常におこなうことができなくなってしまいます。その結果、安全装置の発動によって発電所が停止してしまい、場合によっては予測不能な大規模停電をまねく可能性があります。2018年9月に発生した北海道全域の停電“ブラックアウト”は、この電力需給バランスの崩壊が原因でした。
そのため、電力会社はあらかじめ「発電計画」を作って、これをベースに電力需要の変動に合わせて発電する量を変えています。つまり、たくさん電気が使われると予想される時には多くの量を発電し、電気があまり使われないと予想される時には発電量を抑えるよう、コントロールしているのです。
②インバランス料金とは
インバランス制度における「インバランス」の元の意味は「電力の需要量(使用される電力量)と供給量の差分」のことです。その差分にかかる料金としてインバランス料金が発生します。
発電事業者は、提出した発電計画に対して、実際の発電量が多かった場合には「余剰インバランス」少なかった場合には「不足インバランス」としてペナルティ料金が発生します。小売電気事業者は、提出した需要計画に対して、実際の電気使用量が多かった場合には「不足インバランス」少なかった場合には「余剰インバランス」としてペナルティ料金が発生します。(発電計画とはインバランスの名称が逆になります)
計画を守れなかった発電事業者と小売電気事業者に対しては、不足にせよ余剰にせよ、計画からはみ出た電力量に応じてその差分をペナルティ料金として支払う必要があります。インバランス料金は、そのズレに対して一般送配電事業者に対して支払います。
消費者(各ご家庭を含む)と直接やりとりをし、料金メニューの設定や、契約手続などのサービスを行います。また、消費者が必要とするだけの電力を発電部門から調達するのも、この部門の役割です。一般家庭や商店などに販売・サービス提供をする部門です。 実際に電気を一般家庭等に届けるのは送配電部門ですが、小売部門は直接消費者とやりとりをして、メニュー・プランの設定や契約手続き、料金収納などを行います。
日本の電気のうち家庭で使われるのは30%。 残り70%は産業(工場など)と業務(オフィスビルなど)で使用されています。 なかでも電気をたくさん必要とする製造業は、産業部門の約8割を占めています。
電力料金の仕組み
基本的な電力料金の内訳
①旧燃料調整費:基本料金+従量料金+燃料調整費+再エネ賦課金+(容量市場負担金)
②新燃料調整費:基本料金+従量料金(燃料調整費含む)+再エネ賦課金+(容量市場負担金 )
※再エネ賦課金は、契約者全員が負担するものです。また、(容量市場負担金)は従量料金に含む場合もあります。(各事業者の判断となる)
料金
①基本料金とは?
基本料金とは固定された料金で、使用した電力量に左右されず、契約電力により一律にかかる料金です。基本料金は各電力会社のプランにより決まります。
②従量(電力量)料金とは?
電力量料金とは、使った電力量により決まります。計算式は次の通りです。
「電力量料金単価×月々の使用電力量±燃料費調整単価×月々の使用電力量」
電力量料金単価は、各電力会社のプランにより決められています。使用する時間帯や季節により電力量単価が変動する業務用季節別時間帯別電力プランなどいろいろなプランが存在します。
また、燃料費調整単価とは、火力発電に使う燃料単価が増減した場合に適用されるものです。すなわち、燃料費が上がれば増え、燃料費が下がれば減ります。
③旧燃料調整費とは?・新燃料調整費とは?
旧燃料調整費
毎月の電気料金は、契約の容量(大きさ)で決まる基本料金に、使用電力量に応じて計算する電力量料金を加えたものです。そのうち、電力量料金は、毎月の燃料費調整単価に使用電力量を乗じた燃料費調整額を加算、または差し引きして計算します。
東北電力の旧燃調とは、電力需給契約の契約期間の終期が2023年10月30日以前の場合(特別措置①)、電力需給契約の契約期間の始期が2022年11月1日以降で2023年3月31日までの場合、または、特別措置①に該当する需要家が契約期間満了後も引き続き電力需給契約を締結する場合(特別措置②)について適用されます。

新燃料調整費
毎月の電気料金は、契約の容量(大きさ)で決まる基本料金に、使用電力量に応じて計算する電力量料金を加えたものです。そのうち、電力量料金は、毎月の燃料費調整単価、離島ユニバーサルサービス調整単価、および市場価格調整単価に使用電力量を乗じた燃料費等調整額を加算、または差し引きして計算します。
東北電力の新燃調費とは、特別措置②の従量料金単価に燃調費12.12円を加算した値(新料金)について適用されます。

④再エネ賦課金とは?
再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)とは、電力会社が再生可能エネルギーの電力を買取るために要した費用の一部を、電気を使用するすべての方が負担するというものです。
再生可能エネルギーで発電された電力は、毎月の電力使用量に応じて請求されます。この価格は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度によって定められているもので、毎年度経済産業大臣が決めています。
⑤容量市場負担金とは?
容量拠出金とは、容量市場において供給力を確保するために、電力広域的運営推進機関(広域機関)の定款に基づき、小売電気事業者および 一般送配電事業者、配電事業者に拠出いただくものです。
送配電部門とは?
2020年4月、各電力会社において「送配電部門の法的分離」が実施されました。
電力会社には、大きく分けると
(ア)電気をつくる「発電」部門
(イ)つくった電気を使う場所まで届ける「送配電」部門
(ウ)家庭や工場などに電気を売る「小売」部門
の3つの部門があります。このうち「送配電」部門を別の会社にするのが送配電部門の法的分離です。
電力小売全面自由化により、「小売」や「発電」を行う事業者は増えましたが、「送配電」については、新たに変電所や鉄塔、電線などの送配電網を整備することは非常に困難であり、公共性の高い事業であることから、すでに送配電網を維持・運用している地域の電力会社が受け持つことになっています。
しかし、そのままでは、送配電網を持つ電力会社と送配電網を借りることになるその他の事業者が同じ環境とはいえません。そのため、送配電部門を別会社にして(送配電部門の法的分離)、どの発電及び小売事業者も公平な環境とする必要があります。
<東北エリアの最終保障供給とは>
最終保障供給とは、高圧または特別高圧で電気の供給を受けるお客さまが、万一 いずれの小売電気事業者からも電気の供給を受けることができない場合、お客さまを 保護する観点から、次の小売電気事業者との契約が開始されるまでの間の電力供給を、 一般送配電事業者(東北電力ネットワーク株式会社)が担保するものです。
<託送料金とは>
電気の託送料金とは、電気の小売事業者が、需要家に「送電」するための費用として、送配電網を有する送配電事業者に支払う料金のこと。
2023年4月より、「レベニューキャップ制度」という新しい託送料金制度が導入されます。制度の主な目的は、安定供給や、再生可能エネルギー導入拡大、デジタル化などに対する投資を十分行える収入の確保と、コスト効率化の両立です。
5年に1度、一般送配電事業者が事業計画を策定し、それを前提に収入上限(レベニューキャップ)を見直し、経済産業大臣に承認申請を行います。承認されれば、収入上限内で託送料金も見直しができます。レベニューキャップ制度に基づき、2023年4月1日から託送料金が値上げします。値上げの理由としては、再生可能エネルギーで発電された電気を送るための設備の新設、老朽化している送電線の更新などのため、収入を増加させる必要があるとしています。
託送料金は、「託送料金相当額」として算出され、電気料金に含められて請求されます。
※東北電力以外の小売電気事業者と契約している場合の託送料金
託送料金相当額=託送料金平均単価(円)×使用電力量(kWh)
託送料金平均単価は、エリアによって異なります。
・東北電力エリア託送料金平均単価:10円75銭
※東北電力と契約している場合の託送料金
業務用電力・業務用ウィークエンド電力・高圧電力・高圧電力Sにてご契約のお客さま
・基本料金(契約電力1キロワット・1月あたり):+18円70銭
・電力量料金(使用電力量1キロワット時あたり):+ 0円06銭
※自己託送の託送料金
・自己託送の託送料金:基本料金のない従量料金(電力会社や契約種別によって違う)
卸電力市場の取引には、日本卸電力取引所(JEPX)で運営され実需給の前日に取引を行う「前日市場(スポット市場)」、当日の発電不調や発電・需要調整の場として実需給の1時間前までに取引を行う「当日市場(時間前市場)」、将来の特定期間(1年間、1か月、1週間)に受け渡しを取引する「先渡市場」、JEPXの会員以外の発電事業者が、太陽光発電や風力発電でつくられた電気を販売できる「分散型・グリーン売電市場」などがあります。
現在は「ベースロード市場」「受給調整市場」「容量市場」「非化石価値取引市場」が、それぞれの価値に対応して創設され、運用、或いは制度設計の段階となっています。
日本卸電力取引所(JEPX)は、我が国で唯一の卸電力取引市場を開設・運営する取引所です。
<分散型・グリーン売電市場>
日本卸電力取引所(JEPX)が2012年に創設した新たな市場の事です。
売り手が販売価格・販売量・売り条件(期間や曜日)等を任意で設定できる仕組みです。
<ベースロード市場>
ベースロード電源を取引する電力市場のことです。ベースロード電源とは、原子力、石炭火力、一般水力(流れ込み式)等のことを指し、コストが低く出力が一定であることが特徴となっています。
<需給調整市場>
電力需給のバランスを維持したり周波数制御を行ったりするのに欠かせない「調整力」を取引する市場です。 電気は貯めておくことが難しいため、常に需要と供給を一致させなければなりません。 この需給バランスが崩れると、電気の周波数が乱れて安定的に供給することができなくなってしまう恐れがあるのです。
<非化石価値取引市場>
再生可能エネルギーや原子力など、非化石発電方式による電気の「非化石価値」を示す証書を取引するために創設された市場です。 発電事業者と小売電気事業者が電気を売買する場で、会員制の日本卸電力取引所(JEPX)に開設。 2018年から取引されています。
JEPXは、発電事業者などが電気を売りに出し、電気が欲しい小売事業者などが電気を買う仕組みで成り立っています。
<市場連動型の価格はどの市場で決まるのか>
市場連動型とは、市場価格の動きに応じて電気料金の単価が変わるプランです。国内で唯一の卸電力取引所「日本卸電力取引所(JEPX)」で市場価格が決められています。
市場価格は電力需要の変動により変わります。電力需要が高くなると市場価格も高くなり、需要が低くなると市場価格も下がるのです。 前日市場(スポット市場)、当日市場(時間前市場)、先渡市場のどれもが市場連動型の市場価格に反映します。
相対取引とは?
発電設備を持った事業n所等と交渉し、一定量の電力を一定の価格で調達できるように手配する「相対取引」です。仕入れの量と価格を事前に固定化することでJEPXへの依存度を下げ、その結果、市場変動の影響を受けづらくなり、リスクが抑制されます。
容量市場とは?・入札者と応札者・費用の配分・(注記)需給調整市場とは
<容量市場とは?>
容量市場とは、電力量(kWh)ではなく、将来の供給力(kW)を取引する市場です。
将来にわたる我が国全体の供給力を効率的に確保する仕組みとして、発電所等の供給力を金銭価値化し、多様な発電事業者等が市場に参加していただき供給力を確保する仕組みです。
まず、「電力広域的運営推進機関(広域機関)」が、4年後使われる見込みの電気の最大量(最大需要)を試算し、この量を満たすために必要な「4年後の電力の供給力」を算定します。
そしてこの調達量をまかなうために、「4年後に供給が可能な状態にできる電源」を募集しオークション方式で価格が安い順に落札される、という仕組みで価格が決定することとなるのです。
<入札者と応札者>
「入札」とは、物品の売買や工事の請負などに際して、契約を望む者が複数ある場合、金額などの条件について文書で示させ、その内容を比較して契約相手を決定することを指す言葉です。
「応札」とは、「競争入札に加わること」という意味の言葉です。より狭義には、入札書を入札箱に投函する行為について言います。
「入札者」と「応札者」は入札と応札を実施する者をいいます。
<費用の配分>
一般送配電事業者・配電事業者の容量拠出金の配分比率については、当該エリアの年間最大H3需要発生月の各事業者のH3需要をもとに、以下の式によって計算を行います。
配分比率 = 各事業者が配電を行う地域のH3需要※ ÷ エリア全体のH3需要※
(当該エリアの最大需要発生月のH3需要※)
※H3需要: ある月における毎日の最大電力(1時間平均)を上位から3日とり 平均したもの
<注記:需給調整市場とは>
一般送配電事業者が電力供給区域の周波数制御・需給バランス調整を行うために必要となる調整力について、多くの電源等への参加機会の公平性確保、調達コストの透明性・適切性の確保の観点から、公募により調達を実施しております。
より効率的な需給運用の実現を目指すため、公募調達に加え、2021年4月よりエリアを越えた広域的な調整力の調達を行う「需給調整市場」を開設いたしました。
需給調整市場においては、需給調整市場システムにより、市場運営者である各エリアの一般送配電事業者は、調達を希望する調整力の必要量を提示し、調整力の提供事業者は当該必要量に対して入札を行っていただきます。
日本の電力供給は一般送配電事業者が電力供給のバランスや末端需要家までの電力のお届けを責任をもって行っています。一般送配電事業者とは、送電線・配電線などの送配電ネットワークを管理し、電気をお客さまのご使用場所まで送り届ける役割を担う企業です。
各小売電気事業者は、送配電網の利用料金として「託送料金」を一般送配電事業者に支払い、発電所からお客さまへ電気を送り届けてもらっています。送配電ネットワークの管理は安定供給を担うため、電力自由化後も引き続き、政府が許可した大手電力会社(東京電力等)が担当してきました。
しかしながら、電力自由化で健全な競争を行うためには、大手電力会社だけでなく、新規事業者も公平に送配電網を利用できる必要があります。
そこで、独立性・中立性を確保するために、送配電部門が大手電力会社から分離され、一般送配電事業者として独立しました。
現在、日本全土は10供給区域に分割されており、供給区域ごとに1社の一般送配電事業者が存在しています。
北海道電力ネットワーク株式会社、東北電力ネットワーク株式会社、東京電力パワーグリッド株式会社、中部電力パワーグリッド株式会社、北陸電力送配電株式会社、関西電力送配電株式会社、中国電力ネットワーク株式会社、四国電力送配電株式会社、九州電力送配電株式会社、沖縄電力株式会社を指しますが、仮に電力販売会社である新電力がつぶれたとしても電力の安定供給には何の変更もありません。
ただ単に電力代金の支払先が変わるだけの話なのです。
